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泉美木蘭
2017.2.7 02:25

自民党の「特例法支持」の理由を正確に読むと…

自民党はいよいよ「特例法による退位」で意見集約するようだ。
高村副総裁によると
「恒久法でやると、要件を決めることが極めて困難、というのが、
みなさんの意見の中での大きな理由だ」
とのことだが、正しくきちんと表現したほうがよい。
正確には、

「恒久法でやると、我々政権の支持基盤を安心させることが極めて
困難だから、お気持ちを表明された陛下には即座にご退位いただく、
というのが、みなさんの意見の中での大きな理由だ」

だろう。

朝日新聞の、自民党による「特例法支持の理由と課題」の表を見ると
こうなっている。



いきなり大前提が『今上天皇が活動に困難を感じていると、国民が
心労に共感し、負担軽減を考えている』部分だけとなっていて、
『安定的な皇位継承』を望む陛下のお気持ちへの共感が切り離され、
《今上天皇お疲れ様退位》だけに目的が絞られている。

「天皇の意思を要件にするなら、憲法に反する可能性」
と言うが、そもそも「今回の天皇陛下のご意思だけ」に対処しようと
いう思惑があるからこそ、そんな理屈を思いつくだけであり、
憲法2条による通り、皇室典範を根拠にすればなんの問題にもならない。
そもそも、もしも天皇陛下が
「生涯にわたってこれだけ自由をはく奪され続けて、毎日国民を思い、
祈り続けていても、まだまだ一切の意思を許さないと縛られる人生など
もう嫌だ。天皇なんてやめたい」
とおっしゃったらどうするのか。
それでも「そんな意思は憲法違反だ! 強制的に天皇をやらせろ!」
と言えるのか。

年齢は個人差もあり、一律には決めにくい」
なぜわざわざ「年齢」や「高齢化の定義」を問題にしているのか?
高齢化に伴う体力の衰えなど、「天皇の意思」にもとづき、
皇位を受け継ぐ「皇嗣が成年」に達していれば、
「皇室会議の議により」退位できるとすればよい。
むりやり答えのでない問いを持ち出して、「まとまらない」結果を
呼び寄せようとしているだけでは。

「職務遂行能力を要件とすれば、世襲制との整合性が問題に」
なぜ世襲制との整合性がとれなくなる?
「天皇陛下があんなに国民に敬愛されるようなことするから…」
などというゲスな思惑で陛下を疎ましく見る目があるから、
意味もなく「世襲制との整合」を問題視してるだけでは。
世襲制は「世襲によって皇位を受け継ぐ」ことであって、
「老いて生活もままならなくなる・痴呆の症状が出るなどしても、
死ぬまで皇位に就く」という意味ではないと思う。

「一代限りには賛成だが、将来的な皇室典範改正も視野に入れるべきだ」
という指摘がおまけのように紹介されていたが、その「将来的な」が
本当に具体的な話だとは思えないし、
それなら特例法の付則に「◎年までに皇室典範をを改正する」と規定を
いれようと言い出したとしても、すでに倉持麟太郎氏が指摘されている
通り、その付則には強制力もなければ、破った場合の罰則もないから、
信頼することはできない。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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